どの事業で起業するにも開業資金が最初のネックになるはずだ。介護事業においても同じであり、特に介護分野の場合は設備や人員について法令で厳格に定められているため、開業資金の節約にも工夫が必要になってくる。さらに、いくら節約が上手くいっても法令基準をクリア出来なければ開業許可が下りないばかりか、開業以降でも認可取り消しになってしまうため、入念に起業計画を立てることが欠かせない。
介護事業は行政依存の割合が高い保険事業であり、開業までの手続きは煩雑で長期間かかる。しかも開業直後の介護保険収入は2か月後以降なので、準備期間まで含めると無報酬のままの状態が長く続くことになる。当然その期間中にも、人件費や光熱費などの経費が発生するわけで、それに耐えうるだけの資金が必要になる。
また介護の事業形態によっても、必要になるコストのウエイトが異なる。デイサービス施設でまずコストが大きくなるのが設備。これは介護施設という場でサービスを提供する事業形態なので当然だろう。そのうえ施設内外の備品についても法令で定められており、この部分のコストをカットするのは難しい。例えば送迎用の専用車両や、施設内の入浴場などがそれに当たる。
一方、訪問介護については、訪問先で介護サービスを提供する事業形態の性質上、設備投資のコストはそれほどかからない。その一方で、訪問介護事業には利用定員の定めがないので、利用者の数が増えるごとにヘルパーを増員する必要が出てくる。そのため、人件費のコストが大きくなる傾向がある。
このように介護で起業すると一口に言っても、開業前後の充分な資金が必要であり、事業形態ごとにコストのウエイトに特徴がある点も知っておく必要があるだろう。